【カルビーの働き方改革】日本の単身赴任について考える
- Mr.KUNIO
- 2020年6月27日
- 読了時間: 6分
更新日:2020年6月28日

2020年6月25日、カルビーはオフィス勤務である800人を対象に働き方改革を実施すると発表しました。
その内容は大きく2つで、①在宅勤務を継続し、②単身赴任を無くすといったものです。

今回は【日本の"単身赴任"という悪しき文化】という観点で解説していきます。
目次
日本の単身赴任の現状
単身赴任が引き起こす問題点
連鎖していくことが本当の問題
家族との時間を大切にしないことによって成り立つ社会
最後に
日本の単身赴任の現状

日本の単身赴任は75万人(2015年)
2015年の国勢調査によれば、男の有配偶者のうち単独世帯員(いわゆる単身赴任者)は75万人となりました。
1997年ピーク時は741万人もいたところから比較すればかなり減少したとみられますが、有配偶者全体から占める割合でいえば2.4%とまだ一定数を占めていることが分かります。

日本の転勤の文化
「〇〇君、来月一日付けで、××支店に異動の辞令がでたから。」
期の変わり目のタイミングに日本の多くの会社でしばしばこんな光景が見られます。
特に各地方に支店、支社を構える大手企業などに努める方で総合職であれば、このような転勤・異動はある意味宿命とも言えます。
転勤の理由は様々で主に以下のような目的が存在します。
多様な部署で経験を積ませるため(キャリアアップ)
人的資源の活性化および偏りを無くすため
癒着や不正を行うリスクを減らす目的
都市伝説的になりますが、「持ち家を買ったとたん転勤を命じられた!」など、会社への忠誠心を試されているというケースも少なからず存在するのかもしれません。
所帯を持っていて転勤を命じられた場合、とるべき選択肢は2つ、
家族を引き連れて引っ越しをするか、単身赴任の道を選ぶかです。
そしてすでに自宅を購入している場合は、前者を選ぶことはなかなか難しくなります。
ここで注目するべき点は日本の転勤の場合、辞令が下りてしまったら【NO】という選択肢は取りづらく、強制的なものがほとんどであるという点です。
これは日本の会社への奉公的な考え方、文化がよく表れていると私は考えています。

欧米の場合
では欧米の場合は転勤やそれに伴う単身赴任は存在するのでしょうか。
当然と言えば当然ですが、欧米にもやはりあります。
ただ欧米の場合は、日本と異なり強制的なものではありません。
よくある例では、
「この部署のリーダーポジションに空きが出たためキャリアアップで異動する気はないか?」
などと問われるようなケースです。
日本とは異なり欧米では終身雇用の概念がないため、キャリアアップをとるか、現状維持をとるかの選択肢があります。(まれに左遷か退職という選択肢を求められることもあるようですが、「退職」の意味合いが終身雇用の日本とは大きく異なります。)
日本式のような転勤や単身赴任を望んでいないにもかかわらず
会社の命令により各地に飛ばされるということが、そもそも起きにくいのが欧米の雇用形態なのです。

単身赴任が引き起こす問題点
単身赴任はどんな問題を引き起こすのでしょうか。
当事者に影響するのは、まず間違いなく家庭の関係性の悪化です。
小さな子供などがいる場合はそのあたりはより顕著になるでしょう。
旦那が赴任先で、あるいは妻が自宅で浮気や不倫に走ってしまうケースも珍しくはありません。
一度家庭を大事にしないという習慣が身についてしまうと(これは夫婦とも言えますが)、立て直しは非常に困難です。
例えば単身赴任が続けば旦那のごはんを作ることが無くなります。
まぁあたりまえですね。
この状態で赴任期間が終了し家に戻ったとしても、妻が旦那にごはんを作るという習慣が消えてしまっているので、作ることが非常に億劫になり「あなたは外で食べてきていいわよ」ということにもなりかねません。
家の居心地の悪さも相まって、この結果なかなか家に帰りたがらない旦那が誕生します。
あなたの職場にもこんな上司がいるのではないでしょうか。
彼ら自身の努力も足りなかったのかもしれませんが、
このように会社に強制された単身赴任の結果、出来上がった側面もあります。
つまり物理的な距離が離れるだけで、結果的に失うものは想像以上に大きいのです。
一部の変わった趣向の方の場合、逆に単身赴任で遊びたいと、結婚当初から確固たる意志を持つ人もいますが、それであればなぜ結婚したのか謎ですね。

連鎖していくことが本当の問題
このように単身赴任により1人の被害者とその家庭が生まれましたが、
本当の問題は【このような家庭内不和がほかの家族にも連鎖する】ということなのです。
例えば先ほど、「なかなか家に帰りたがらない社員が生まれた」と言いました。
もしこの社員がある程度実力をつけていき、課長、部長などの上位ポジションになったらどうでしょうか。
家に帰りたくないがために、非効率な残業をする、あるいはそれを強いる(「自分もやっているんだからお前もやれるだろ」というような)かもしれません。
また、仕事が早く終わっても時間があるとなれば、無理やり部下に飲みに誘うようになるのではないでしょうか。
この場合、家では妻にも子供にも相手にされなくなってしまったので、飲みの場で懇々と部下に説教をする少々面倒な人になってしまうのです。
そもそも家に帰るというモチベーションがないので、仕事の効率も上がらず生産性へ悪影響も懸念されます。
上記のような非効率的な業務環境や、夜の晩酌に若手や中堅社員は付き合わざるを得ないため
その家族からは「夫・パパがなかなか帰ってこない!」という不満が蓄積されていきます。
結果的にこの若手や中堅の家族内でも同様の家庭内不和が飛び火してしまう形になるのです。
このように一つの家庭内不和が、ほかの家庭にまで連鎖しながら悪影響を及ぼしていくことこそが、日本の雇用形態・単身赴任の文化における本当の問題であると考えます。

家族との時間を大切にしないことによって成り立つ社会
単身赴任というものが一つのきっかけとなり、自分の家庭から他の家庭、さらには会社全体の生産性にまで悪影響を及ぼすということがお分かりいただけたでしょうか。
恋は会わないうちにも育むことができますが、
愛は会っている時間にしか育まれることはありません。
往々にして、ともに過ごした時間の量に比例するものです。
定年退職した後も人生は続きます。
会社の人間関係はしょせん会社でのものです。
定年退職後毎日会ってくれる元会社関係の人など存在しません。
私たちが大切にすべきは家族である、という認識をもう一度強く持ち、
現在まさに関係性が悪化している家庭でも諦めることなく努力を続けてほしいものです。
それが家に帰るモチベーションになり、ひいては日本の生産性の高さにつながるのだと、大げさでなく私はそう思っています。
「単身赴任と家族との時間を大切にしないことで成り立つ社会」
これを変えなければならないと強く思います。

最後に…
ここまで読んでいただき有難うございました。
ここで勘違いしないで頂きたいのは、私は転勤自体を否定するつもりは一切ありません。
事実、私も転勤や転職により新たな環境を経験しましたが、いずれも自分の能力の幅を広げるきっかけになり有意義なものだったと思っています。
しかしこれはあくまで本人が望んだ場合のものです。
特に理由がないにもかかわらず転勤による単身赴任は不幸を招くという結論です。
その意味で今回のカルビーの単身赴任を無くす施策について私は支持します。
今後このような会社が多くなることを期待しています。
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